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2012年8月30日 (木)

グラム30円

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ある日、見知らぬ人から電話がかかって来た。

「お宅に、黒ずんでしまった金属製の器やカップなどがありませんでしょうか?」

なんの事やら判らないので黙っていると、「実は私どもXXという会社でして、使わなくなった銀製品を買い取らせて頂きたいんですが...」
「最近金価格が上がった事をご存知ですよね」
「それに吊られて銀も値上がりしています」
「もしいらない銀製品があれば高く買い取らせて頂きたいんですが...」
「以前は銀は安くてとても買い取りなどしてなかったんですが」

よく聞いてみると、買い取りをしたいと狙っているのは...
「私どもの買い取りで最近多いのが、ゴルフの優勝カップや入賞のカップが多いんです」

・・・どうも、以前のゴルフ場の名簿などから当たりを付けて電話しているらしい。

「カップ...ある事はありますが...」
Kさんは、ついそう応えてしまった。
「そうですか! もしそれがどうしても手放したくないものでなかったら、買い取りたいんですが」

結局、3日後に売る事になってしまった。
黒ずんだカップ...物置の奥に10個以上あるはずだ。
今はなかなか楽ではない生活で、しばらくゴルフはやっていないが...結婚する遥か前、父親に連れられてゴルフに熱中していた時代があった。
バブルの頃中学生だった自分は、仕事が上手くいっていた父親のすすめでゴルフを始めた。
父親と同じゴルフクラブの親子会員になって、レッスンプロにも付き、ジュニアの競技も始めた。
月例もCクラスから出始めて、優勝や準優勝を重ねて、最後は父と同じAクラスにもなった。
ジュニアの試合では、予選を通る事は多くなったが...そこまでだった。

やがてバブルの終焉とともに、父親の仕事も傾き、家を売り、会員権も売って、家族でアパート暮らしをするようになり、ゴルフをしなくなった。
やがて結婚して今の家に住む時に、何となく自分のカップなんかを持って来たのは、その頃は銀なんて安くて売る事も出来ず、かといって自分のゴルフの勲章を捨てる事も出来ずにいたためだった。
あまり楽ではない今の生活に、そんなカップ達がお金になって役に立つなら、それもいいか...という気持ちだった。

念のために、今の銀相場とやらをネットで調べてみると、値段としてはグラム60〜70円...高いか安いか判らないので、カップを家庭用の計りに乗せてみると、250グラムくらい...グラム60円なら、15000円!
意外と高いのに驚いた。
これなら、全部売れれば20万円以上になるのでは?
それに、もっと大きいのもあるし...

3日後に来た業者は、腰は低いがその買値は...安かった。
グラム30円。
いろいろとチェックした業者の、全部の買値は9万円。
「相場は60円以上なのに?」
「買値はそんな値段にはならないんですよ」
「それに、これらのカップは確かに銀製品ですが、純銀ではなく92パーセントの銀ですので、全体の重量より安くなります。」

買われたのは銀製の優勝カップが大小10個程。
飾り物の銀製品や特別大きなカップは、メッキだということで買えないとの事。

少し悩んだ。
しかし、「思い出は売れなかったカップや銀製品で十分、黒ずんで行くに任せたカップの思い出はお金に換えて、生きたお金をこれから使おう」と、売る事を決めた。

カップを一杯詰め込んだ袋を下げた業者を見送ったあと、Kさんは9万円のお金を見て考えた。
もう一度、これを元にゴルフを初めて見ようか。
夫は、以前は仕事関係でゴルフをやっていたみたいだが、今は何年もやっていないようだ。
自分にしたって、今は道具もウェアも持っていない。
でも、この金を元に少しずつ貯金をして行って、そう遠くない未来に夫と二人でゴルフを楽しんでみたい。
幸いプレーする費用は安くなっているし、安いコースを選んで月に一回か二月に一回ゴルフを楽しむことは悪い事じゃないだろう。

ゴルフの思い出から生まれたこのお金、これからゴルフの思い出を作るのに使ってみよう。
長い間物置に眠っていたカップ達は、きっとそれを喜んでくれるだろう。

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