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2013年10月28日 (月)

「ぶつけておしまい」がピンに寄る

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「転がしのチップショットは、フェースをかぶせて『ぶつけておしまい』がピンに寄る」...矢部昭。

矢部昭は、当時172センチ64キロの身体でツアー1番の軽量級ゴルファーだった。
1980年当時は、青木・尾崎・中島等の「大型ゴルファー」が、ゴルフ界を席巻し始めた時代だった。
その中で、その軽量級の身体で1982年に日本オープンを制したのは素晴らしいアイアンショットと小技の冴えがあったからだと言われている。

とは言っても矢部昭は何もしていない軽量級だった訳ではなく、子供の頃からスキーをしていて下半身は細いながらもしっかりとした筋肉がついていた。

矢部昭が日本オープンを獲って3〜4年後だったと思うが、私は雑誌の仕事で一緒にラウンドする機会があった。
場所は鬼怒川カントリークラブ。
編集者と私と矢部昭プロだった。
私はゴルフを初めて1〜2年程、まだ30代半ばでゴルフに熱中していて身体は良く動いた。
当時は取材の時にはプロとラウンドするのが普通で、途中色々な場面で質問したり、プロにそのプレーをやってもらったり、レッスンを受けたりしてメモしながら写真を撮りながらまわっていた。
この格言は、自分が直接聞いた一言。
どうしても、テレビで見た様な技を色々とやりたがっては失敗する自分に対して、矢部プロは地味な転がしでピタピタピンに寄せて行く。
自分は上げなくても良い場面で上げようとして失敗し、スピンをかけようとしてはピンを大オーバーし、じゃあ転がそうなんて思っては大ショートする。

その時に、矢部プロがフェースをかぶせる、ボールに上からこつんとぶつける、フォローはいらない、ぶつけて終わり、と言ってくれた。
フェースをかぶせないと、スピンがかかってショートしやすくなる。
フォローをとろうとすると、正確にボールに当たらずにトップやダフリが多くなる、んだと。

実際にそうやってみると、面白いようにピンに寄る。
その日は結局80そこそこでまわり(フルバックから)、一緒にまわった編集の男からもたんまりと握りを頂いた。
このアプローチはその後の自分の基本のアプローチになり、今でも困った時はこれで行っている。
ただ、「打って終わり」と言うのをやり過ぎて、たまに打ったあとクラブが地面に刺さったまま、なんて時があるけど。

でも、この矢部プロの言うアプローチが一つ出来ると、他の「上げたいとき」「止めたいとき」のアプローチも不思議と出来るようになった...これは、その時の気持ちがはっきり切り替えられる為と、失敗しても次にはあれがある、という余裕が出来たからかもしれない。

一度難しく考えずに、こんなシンプルなアプローチを試して頂きたい。
誰でも簡単に出来るから。


余談だけど、このラウンド中ドライバーを使ったホール全部で矢部プロをアウトドライブした。
当時は糸巻きとパーシモンだったけれど、私は270ヤードの練習場のネットを越えるボールを打っていた(他の取材の時...新ボールの試打だったけれどネットを越えてしまうので取材中止になった事があった)。
...その取材が終わったあと、矢部プロが私に向かってしみじみとこう言った。
「神様はなんて無駄な事をするんだろう...私に君の身体があったら、世界を相手に戦って行けたのに...」。(当時の私は181センチ75キロくらい)
冗談ではなく、真顔でそう言われたので何も言葉を返す事が出来なかった。
当時、色々なプロと取材でラウンドする機会があったけれど、矢部プロのこの最後の言葉が一番記憶に強く残っている。

もう今では、その身体もすっかり錆び付いてしまったけどね。

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