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2014年7月 5日 (土)

掘っくり返し屋の戯言 「皆が思うよりは...?」

Bu140627You-Tubeに、ヒッコリーゴルフについて、Stアンドルーズで復刻クラブを作っているStアンドルーズ・ゴルフ社を絡めたディスカバリーチャンネルの番組がアップされている(英語と日本語字幕の2種あり)。
番組内で工房内のクラブ製造の様子が挙げられて居るが、その中で興味深く思ったのが、ゴルフの発展はクラブよりもボールによる所が大きいとする見解を示す為に行われた、工房製の古式クラブを用いた年代別試打実験であった。

実験は室内ゴルフの設備を使い(画面はオールドコースの18番)、テスターが460ccチタンーグラファイトのドライバー、1920スタイルのブラッシー(ヒッコリー)、1880スタイルのセミロングノーズで同じ硬度の柔らかい現代ボールを打つ、と言う物なのだが面白い結果となった。
チタン(ティアップ)278yd、1920ブラッシー(ティなし)269yd、セミロングノーズ(ティなし)262ydと、現代と130年近く前のスタイルであるクラブとの差が十数ydしかなかったのだ。
方向性は、古くなるにつれてヘッドの大きさや幅が小さくなっている事による重心距離の変化からか、チタンがほぼストレートなのに対し、ブラッシーが11:45、セミロングノーズが11:30方向へのプルとなっている。

これを見て筆者が思ったのは、出場者全員が同一ボールを使う競技があればヒッコリー党が現代軍を叩きのめす事が出来るのでは? という淡い期待と、以前から考え、同論の方もいる(ロングノーズはなんとも言えないが)、あらゆる時代のクラブで、ちゃんと威力のある一定の球筋を打つ事のできるスイングが必ず有るという確信であった。

昔のクラブは距離が云々という言を目にされている方々には、どういうことだ? と思われるだろうが、それについてはボールの影響が大きく、過去から現在に至るまでに行われた現代・古式クラブの対比実験で(当時)最新のボールを使用した際の飛距離は、現代(当時含め)クラブとの距離の差が余り〜殆ど無いと言う結果が出ている。

1964年7月にアメリカの雑誌「Popular Mechanics」のアレンジで、アーノルド・パーマーがスチール・ヒッコリー両セットでフロリダのラ・ゴーシCCの9ホールをプレーする対比実験をした際、結果は現代のクラブが36ストローク、ヒッコリークラブが39ストロークであったが、八番ホール482ydパー5ではブラッシーで290ydのドライブ、ミッドアイアンでグリーン左へ持って行き、ニブリックでカップから6いnに着け見事なバーディー4を見せた記録が有る。
が、パーマー本人は、飛距離と最上のコントロールを求めている身として、愛用のクラブに比べヒッコリーには信用が置けないとのコメントを残している。
(E-bayに於ける実験使用クラブ出品の際の商品紹介及び掲載の雑誌記事より、2006年6月15日時確認、他Golf Journal1975年6月号より)

1972年には前年のアフリカOP勝者、サイモン・ホブズデイが正規のヒッコリーセットで9Hプレーをしたのだが、驚くべきことに飛距離が現代クラブと比べほんの少し落ちる程度であり、またアンティークパターの方がスチールシャフトの物よりも20ftのパットが安易であったとの報告が有る。

日本でも本格的な物は確認出来た中で「Choice」が1980年代に二回行っているが、85年1月号の企画が一番充実していた。
これは城村克身プロと久富章嗣氏らアマチュア三人がニッカースーツにネクタイと言う出で立ちで河口湖CC南コースでヒッコリーにガッティボール(フローター)を使い、9Hをプレーすると言う企画であった。
服装についてのスウィングの影響は、進行役の城村・久富の両氏は窮屈には感じないとしているが、プレーでは反発力が少なく軽いガッティでは、この二氏でも150〜170m(164〜186yd弱、当時はメートル表記な為、以下ヤード換算とする)のドライブがやっとで、スコアも城村プロの45がベストであった。
*近代のコースでガッティのプレーは流石に無理があったと言えるだろう。ガッティ時代のコースで今のパー72に相当するのは4500〜5300yd台で、6000ydを越えるコースはボギー80台が普通であった。

ガッティでの結果は芳しくなかったが、実験中余番563ydパー5で城村・久富両氏にヒッコリー・ガッティ、モダンクラブ・モダンボール、ヒッコリー・モダンボールを打ち比べると面白い結果が出た。
(クラブ・ボールの種類は上記の順)
城村プロが175yd・317yd強・281yd強、久富氏は186yd強・257yd・297yd強と、ヒッコリー・モダンボールでロングドライブを出しているのだ。
会場が富士山麓の高地に在る事や、久富氏のドライブの落下地点がダウンヒルでランが多めに出たとしても、ヒッコリーシャフトの優位性を示してくれているだろう。
(続く五番153yd弱パー3でもモダンボールで打ったところ、城山プロ(アイアンの)クリークでオーバー、久富氏はマッシーでカップ手前3メートルに着けている)

USGAも1994年に役員で1988年全米ミッドAm勝者David Eagerに、複製ロングノーズと1915ブラッシーで、フェザリーから1930年代までの様々なボール(複製)を打たせる実験を行っている。
当時のモダンボール、コンプレッション90のバラタと彼が当時使っているドライバー(メタル)の距離が242〜228ydに対し、同じボールをブラッシーで打った所228〜194yd、1920年代ボールの複製では、メッシュカバーの平均204ydと言う記録が残っている。

メタルのドライバーはヒッコリーの試打を終えてから打っているが、Eager曰く「古いクラブのスゥイングが、新しい物を使う手助けをしている」との事で、その為「ヒッコリークラブをトーナメント前のウォームアップに使うか?」という質問に対し、「方向性は良いが飛距離が短い」として笑顔で否定した。その一方この種のクラブでの感触の良さや風雅については多いに同調している。

現代の対比としては、海外のヒッコリーゴルファー達の「ドライバーが今の3番ウッドの距離」という説や、私の知っているヒッコリー使用者達が「アイアンクラブは同じロフトの現代の物と差異が無い」と語られているが、これらの意見はヒッコリークラブがマッチドセット時代の物でも、ロフト・レングスが現代の物よりウッドが1番手、アイアンが2〜2・5番手程下がる為であるが、私自身も使用者としてそう感じる。

ヒッコリーから少しずれてしまうが、近代パーシモンの距離についても、高反発ドライバー登場の頃かその規制が取り沙汰された頃であったか、読売新聞のスポーツ欄でヘッド素材ごとの反発係数と飛距離の差を取り上げていたのを覚えているが、パーシモンとチタンの差は10〜7yd前後と描かれていた様な..
(クラブ制作・研究家であった佐藤勳氏の1999年発行の著書には、公的機関の発表では差は2〜3%で、やく9ydの差と紹介されている)

また2010年の「Choice」(4〜5月号か)に「最後のパーシモンメーカー」と言われるルイヴィルゴルフの役員がパーシモンについて書いた広告で「98%のゴルファーがパーシモンの芯に当てたショットとチタンのショットの飛距離が変わらない」という話を挙げている。

この時代のクラブとなると国内雑誌でも1〜2年に一回くらい対比実験を行って十数〜二十数yd現代の物より落ちると報じているが、その際に「当時のスペックで」という訳なんだろう、当時のオリジナルの糸巻きボールを使用している。が、ボールの経年劣化による飛距離のロスを考えると、これでは正確な対比が出来ないのではないか?

これはここ数年の対比実験であるが、最近の「Choice」2014年春号に掲載された対比実験では、互いに当時のマッチングでのテストの他、お互いの時代のボールでも計測をしており、現代のクラブとボール、パーシモンと1990年代糸巻きボールの差は23yd程であったが、パーシモンで現代ボールを使い、スピンが抑えられ一番飛ぶと言われるトゥでのヒッティングでは9・6yd短いだけであった。(惜しむらくはチタン・糸巻きでのテストがトウヒットのみで、センターでは行われなかった事だ)

どの時代の物にせよ、純粋にクラブ同士の差を調べるのであるならば、冒頭のStアンドルーズ社の実験の様に同一のボールを使うべきであり、クラブもスペックをしっかりと表示しておく事(特にアイアン)。また、時代ごとのクラブとボールの組み合わせの差を探るのであればUSGAの実験のように復刻させたボールを使うか、当時の物と同じ反発係数のボールを使用すべきと考える。

と、冒頭の趣旨からズレ気味かつ、いろいろまとまりの無い事を書いたが、私を始め「変人」達の考える「クラブの進化は大々的に語られて程の物なのか、その比重は殆どボールが締めているのではないか?」について、冒頭・文末の結果や自分達で試し定説に疑問が出る結果が出ている以上、それらの証明にせよ否定にせよ、正否を引き出す為にはもっと沢山の事件結果が必要になってくる。

You-Tubeには海外の有象無象が行う対比実験(試打・マッチ)やヒッコリーゴルフの動画が2009年頃から多くUPされているが、国内でもゴルフ誌が(しがらみが色々と有るだろうけれども)更なる詳細な実験をやってくれないかしら?
それが望むべく物でないならば、草の根である我々が結果を集め、黙殺者や定説者達に突きつけるしかないだろうか。

妄言多謝
2014年4月5日

松村信吾

文中表記以外の参考史料
私のゴルフ図書館   佐藤勳  1999 Office アイ・サトウ(私家本)
Golf Journal(USGA)1975年6月号 「Hickory Hackers」 Joseph S.F.Murdoch
Golf journal(USGA)1994年1・2月合併号 「The Old Ways」David Earl
Choice 1985年1月号 「その昔ボギーが今のパーだった」(塩田正 構成)



「掘っくり返し屋」の著作権は全て松村信吾氏に所属します。

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